花火の色はどうやってだすの?





化学とは花火を造る術ならん  夏目漱石




皆さんは台所で料理を見ている時に、鍋からふきこぼれた”おつゆ”が、
ガスコンロの炎に触れ、黄色い炎に変わったのを見たことがありますか?
鍋のおつゆには”しょう油”が使われています。そのしょう油には”塩”が含まれています。
塩はナトリウムという”元素(げんそ)”からできています。すべての物はこの元素
からできていますが、元素のなかには燃えると色を出すものがあります。

元素によって色は決まっていて、あるものは、別のものはといった具合です。

元素が燃えて炎に色がつく現象を”炎色反応(えんしょくはんのう)”とよびます。
そのしくみは高校の化学で学習するので、ここではふれないことにします。

この元素の燃える色を私達花火師はたくみに利用して、
夜空のキャンバスに”絵”を描くのです。



私達が利用する主な元素をまとめてみました。

赤色

ストロンチウム

青色

黄色

ナトリウム

緑色

バリウム



最近、あちこちの花火大会で、今までの色とは違う、レモン色や、水色
などの中間色(ちゅうかんしょく)の花火を見かけることが多くなりました。
では、その中間色はどうやって作るのでしょうか?
実は上の表の元素を組み合わせて作るのです。
下に4つの色を並べました、それぞれ2種類元素を使用します。
何と何を組み合わせればいいでしょうか?
予想してみてください。




ヒント:皆さんは絵を描くとき、”絵の具”を混ぜ合わせてさまざまな色を作りますね。
では、”絵の具”ですべての色を表すには何種類の絵の具があればいいとおもいますか?
5種類?10種類?じつはたったの3種類でいいのです。これで、風景でも人物でも何でも描けます。
”絵の具”は赤、青、黄色の3つの色が基本の色で、これを「色の三原色(さんげんしょく)」
といいます。そして、絵の具はこの3つの色を混ぜ合わせると”黒色”になります。

それではテレビの色はどうでしょうか?実はテレビに使っている色(光)は赤、緑、青
3種類が基本でこれを「光の三原色」といい、この3つを混ぜ合わせると”白色”になるのです。
花火は元素の燃える色(光)ですから「光の三原色」からどういった色が作れるか予想できます。
下の左の図を参考にしてください。




「光の三原色」

「色の三原色」



説:

水色 ピンク レモン色 オレンジ
項目にカーソルを合わせると、簡単な解説を見ることが出来ます。




いかがでしたか?難しかったですか?元素を利用して花火に色を
つけるということがわかっていただけたでしょうか。
どの元素がどの色を出すのかということは本にのっていて難しいことではありません。
しかし花火の原料は1種類だけではなく、何十種類という薬品を混ぜ合わせて作るのです。
同じ赤色でも鮮やかな赤色や暗い赤色、これらは全部薬品の配合が違います、また同じ緑色でも
「柳」の形の花火に使うのと「点滅する花火」に使うのとでは薬品が異なります。
何人もの花火師が理想の色を求めた結果、花火会社ごとにこの薬品の割合や種類は違います。



花火工場の工室にある発色に使用する化学薬品


そしてさらに理想の色を求めて毎年のように、この割合と種類を変えていきます。

この作業はコンピューターでシミュレートできません、実際に燃やしてみて、私達の目で判断するのです。
そのために、私達はくる日もくる日も実験を繰り返します。完成まで2、3年かかる色もあります。
ですがこの色で満足することなく、さらに理想を求めて私達の仕事は続くのです。




撮影:菊田菊夫
1999年8月 大曲全国花火競技大会





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