煙火の花道
冬来タリナバ春遠カラジ
花火上がるはじめの音は静かなり 立子
冬の花火製造風景を紹介します。
仙台は太平洋側で冬の降雪こそあまりありませんが、
それでも年に10回程度は積雪します。
またこの時期は空気が非常に乾燥しているため静電気に注意しなければなりません。
いくら寒くてもセーターや防寒服を着ることはできません。静電気が発生するからです。
氷点下の寒さでも、綿の作業着を着用して作業します。
なかでも”配合””星掛け””割り薬”の製造作業は粉塵が飛散するため、
窓を開放して、出入り口の扉も避難路確保のために開けたままで作業します。
当然、冷たい北風が入ったり、時には雪が降りこむこともあります。
寒さに耐えながら花火師はどんな作業をしているのでしょうか。
それではご覧ください。
1月、雪が10センチ程度積もりました。
これでも仙台は東北では積雪が少ないほうなのです。
工場は一面の銀世界。
工場は山の中にあるためここにたどり着くだけでも大変です。
自動車のタイヤにチェーンを巻いて坂道を登りました。
仕事前に全員総出で除雪をします。
工室(こうしつ:花火を製造する部屋)の間の通路に積もった雪を取り除くのです。
これは物や人の往来を容易にするだけでなく、
万が一の事故の際の避難経路を確保するためでもあります。
女性もスコップを持って雪を取り除きます。
大変な重労働で汗ビッショリになります。
この格好で花火の製造作業をします。
綿の作業服にフードと防塵マスク、ゴム手袋です。
いくら寒くてもセーターを着ることもなく、この上に防寒服を着ることもありません。
実はこの格好は冬ばかりではなく夏も同じ服装なのです。
夏は暑くてもう大変!動かなくても汗が出ます。
そして、火薬の粉でたちまち服や顔は粉だらけになります。
工室の周囲の除雪が終了しました。
防火水槽と消火バケツの水も凍結しているので、氷を取り除きます。
こうしないと万が一、発火した際に困るからです。
そして、窓と扉を全開にします。
星掛けの様子です。
この日は氷点下6℃です。この工室には暖房設備はありません。
火薬に水を加え少しづつ造粒機で大きくするのですが、この寒さで水もたちまち凍りつきます。
手もかじかんで感覚がありません。
そこで水にお湯を足して作業しました。
晴れ間をみて”割り薬”と”星”を天日乾燥します。
乾燥設備があってもやはり天日乾燥のほうが良い製品ができます。
時折、雪が降ってくるとすぐにしまいます。また晴れると外で乾燥します。
ここは奥羽山脈に近いので強い季節風に乗って山形方面から雪が飛んでくるのです
一日に何度も出し入れすることもあります。
天気の急変を知らせるために三毛猫の「花子」ゥ が見張りをしています。
夏と違って冬は毎日、工場で地味な作業が続きます。
花火師の仕事は一見華やかなようですが、一年の大半はこういった製造作業なのです。
日本は四季があり、梅雨と秋には長雨が続きます。火薬には湿気が大敵なので乾燥機を使わざるを得ません。
夏(7月中旬〜8月末)は打ち上げが主なので、製造作業は行いません。
こうしてみると冬の時期は花火の製造にとって重要な時期であるといえます。
太平洋側の冬はとても乾燥します。静電気に注意し、寒さに耐えながら私達は花火を造っているのです。
お聴きの曲はから提供されたものです。
この曲(ドビュッシー・雪は踊っている)の著作権は「テーマは音楽(MIDI)」に属します。