花火俳句集

花火俳句集



Photo by Onda


自然をうたった一編の詩としてこれを感じるのなら、
そこにはなんの注釈もいりはしない。
どこよりもここ日本では特に、無常とは、すべてのものの自然なありようだからである。
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)「知られざる日本の面影」より    
 
 ”花火”は俳句では「夏」の季語です。
五七五の十七文字に季語を入れて季節感を表し、
情景を深めている俳句は”季節の詩”ともいわれています。
多くの人が花火を季題として詠みこんできました。
短き季節の移ろいに、儚く消える花火を重ね合わせたのでしょうか。
ぜひ皆さん、この短き”季節の詩”に触れてみてください。

花火師を描写した句 

花火のpic 花火師にとどかぬ拍手送りけり     青柳時子
花火師の舟は湖心の闇に在り      和田義秋
台船に花火師の影直立す        清水礼子
黒子めく花火師阿修羅のごと走り    藤井緑水
花火師の黒子に徹しゐる動き      浅野右橘

花火を描写した句 

花火のpic 揚花火天の太鼓を打つごとし     古賀筑史
遠花火海のかなたにふと消えぬ    素逝
岬ひとつ越して揚がりし花火かな   黒島孤礁
星一つ残して落つる花火かな     抱一
遠花火一呼吸して爆ぜにけり     黒島孤礁
駆け昇る火の脚速し大花火      山本一子

心象についての句 

花火のpic 宵々の花火になれて音をのみ      虚子
人と逢う胸の高さに遠花火       藤木倶子
遠花火窓に見し夜の別れかな      小坂順子
子がねむる重さ花火の夜がつづく    多佳子
手花火を命継ぐ如燃やすなり     石田波郷
ねむりても旅の花火の胸にひらく     林火
花火あがるどこか何かに応へて      綾子
花火盡(つき)て美人は酒に身投げけん  几董
手花火のほのかに浮かぶ母の顔      谷端稔子
    

観客としての句

花火 暗く暑く大群衆と花火待つ      西東三鬼
花火待つ見知らぬ人と話しつ     清水多恵子
行きずりの人に声かけ大花火     黒島孤礁
花火待つ人の影濃き橋の上      吉野秀子
物干場人鈴なりに遠花火      西島わか
河川敷人ひしめきて花火待つ     中村敏夫
         

花火のある風景
花火
沖かかる舟明滅の遠花火        黒島孤礁
大花火車座の宴あかあかと       小平久子
当直医遅き餉をとり花火の夜      馬場駿吉
もの焚いて花火に遠きかかり船     蕪村
温泉(ゆ)の村に弘法様の花火かな   夏目漱石
揚花火遠のきてゆく海の色       石原八束
遠花火開いて消えし元の闇        寅彦




いかがでしたか。
わずか十七文字に描写された心象・風景の”小宇宙”。
俳句は、花火同様、日本が世界に誇れる芸術だと思います。
さあ、皆さんも気楽に俳句を作ってみてはいかがですか?

INDEXへ



「煙火の花道」トップページへ