杜の都・センダート
2月、センダートの工場に”フキノトウ”が地面を割ってぽこぽこ顔を出す頃、
花火工場の許可申請書類の作成が始まりました。
6月から工場を使うためには、今から始めないと間に合わないのです。
使う火薬の種類と量によって”工室”と”工室”の間の距離が決まるので土地の面積と
事業規模から各”工室”で扱う火薬の種類と量、そして間取りを決定します。
さらに”工室”と”工室”の間には延焼を防ぐ”防火壁”が必要なので、できるだけ
南側を避け、北側に配置します。なぜならここは湖を見下ろす山の上なので、冬には、
どっどど どどうど どどうど どどう と北風が吹くからです。
地図上に模型を置いて工場のレイアウトを考え、必要書類を何度も作っては、法律書とにらめっこして訂正し、センダート
の法務局で必要な書類をそろえてようやくカタクリに花が咲く3月に終了。
風光る頃、田瀬湖畔では造成工事が始まっていました。
向ふに曹達か何かの結晶のやうに真っ白な湖がみえます。
ここ田瀬湖ではワカサギ釣とヘラブナ釣が有名で全国から太公望が訪れます。
現場に近づくと、雨二モ負ケズ風二モ負ケズ、造成工事の真っ最中。
堅い、堅い蛇紋岩に難儀しながら、機械で砕くと、きしきしと石が鳴きました。
〜蛋白石のいいのなら、流紋玻璃を探せばいい。
金剛石のいいのなら蛇紋岩化した橄欖石を探せばいい〜
・・・欅の木学士
センダートが新緑に包まれ、まはりがみんなきらきらしてゐる頃、
モリーオ市の役場から連絡があり工場の設置許可がおりました。
社長は工事の進み具合を見にしゅっちゅうイーハトーヴォにでかけました
そのころセンダートの事務所に来た客人はこのように黒曜石でできたやうな掲示板を目にしたはず・・・・。
あたりが、”匂ひ硝子”の欠片のようにすきとほって輝く頃、
工事は6月完成目指して急ピッチで進みます。
ここは花火を作る”工室”です。
火薬庫の工事です。
壁の厚さ15cmの鉄筋コンクリート造りなので石榴石のやうにとても頑丈です。
センダートの花火工場に”ふたりしずか”の花が咲く頃、モリーオ市の役場から”完成検査”を行うとの連絡が,
芳賀静社長にありました。
”やまぼうし”の花が満開になる頃、完成検査も無事終わりました。
この日はとてもよく晴れて田瀬湖の波はちらちらひかりました。
土提で周りを囲まれた火薬庫。
天気輪の柱のやうに横に高く立っているのは、避雷針。
火薬庫に近づくと、空からヒュウと矢のやうに降りて来たものがあります。
ふりかへって見ると、それは母ツバメでした。
火薬庫の軒先にツバメが巣を作っているのです。
ツバメは幸せを運んで来ると言い伝えられているので、
工事関係者も皆、あたたかく巣造りを見守ってくれていました。
田瀬湖畔のあやめ園にあやめが力いっぱい咲く頃、
工場では夏に向けて本格的な操業が始まりました。
青年部の渡辺一彦さん指導のもと、
「田瀬湖水祭り」で打ち上げる花火に火薬を取り付けます。
ここの花火大会は、それはまるで赤や緑や青や様々の火が烈しく動いたり、
のろしを上げたり、またいなずまが閃いたり、光の川が流れたり、山間に尺玉の音がこだましたり、そふかと思うと湖にスターマインと水中花火の
鮮やかな色彩が映え、水色の焔が湖の全体をパッと占領して、今度はひなげしの花や、
黄色のチュウリップ、薔薇やほたるかずらなどが、一面風にゆらいだりしているやうに
見える、見応えのある花火大会です。



