お米と花火のエコな関係

お米と花火のエコな関係









宮城県小牛田町の山の神神社


   このページは2001年10月29日放送 NHK仙台放送局の"ゆうYOUみやぎ"で放送された内容に, 花火師による解説と内容を補足したものです。

夜空に咲く大輪の華”花火”それは火薬の力で”星”を飛ばし開花するのです。 その火薬を”割薬”(わりやく)といいます。この割薬は火薬を造粒したり、 火薬を、燃えカスのでない速燃性の固形物や、コルク、綿の実、籾殻(もみがら)等にまぶして作られます。 これは玉に詰めた時、粉末状の火薬よりも隙間があるため、火の周りが早く”星”を四方八方に飛ばす 威力が増すからです。 なかでも”籾殻”は日本では比較的安価で容易に入手できるため、古くから割薬の芯材として用いられてきました。 秋に水田で収穫されたお米は「籾摺り」という作業で「玄米」と「籾殻」に分けられます。ちなみにこの「玄米」 を「精米」したのが私達が普段口にする「白米」です。 私達の工場でも、宮城県の米どころ小牛田町で農業を営んでいる農家の皆さんが提供してくれた「籾殻」から”割薬” を作っています。

それではお米と花火のエコな関係をご覧ください。

※参考ページ:花火師のふるさと小牛田町


よく乾燥した「籾殻(もみがら)」を用意します。
あまり粉っぽいのはだめで、比較的大きさの揃ったのを使用します。
全国的に美味で知られる宮城米、「ササニシキ」「ヒトメボレ」等いろいろありますが、どの「籾殻」 でもいいようです。



調合した火薬を、噴霧器で湿らせた「籾殻(もみがら)」にまぶしていきます。
この作業は星掛けの機械と同じものを使用します。
均等に付着するように、そして、お互いひっついて団子状にならないように注意を払います。



網の上に拡げて天日乾燥を行います。 途中よく乾燥するように何度もひっくり返したり、かき混ぜたりします。 冬場は天気が急変するので、天気予報のプロ・三毛猫”花子 ”が見張りをしています。 ”花子”が顔を洗えば雨が降る前兆。すぐに割薬を乾燥機に搬入します。
花子よしよしお前は偉いぞ!!!
花子LOVE LOVE LOVE
完全に乾燥したら、玉詰めの作業工室で星と一緒に詰め合わせて花火の出来上がり。




「籾殻(もみがら)」と「小牛田町」に関してのオマケのお話 



NHKの取材をうける芳賀火工の花火師


この日、籾殻と花火の製造風景、小牛田町の山神社が撮影されました。

山神社は春は花見の場として小牛田町民に親しまれています。
そんなわけで「壁紙」は満開の桜!
春だ!花見だ!花火だ!!(笑)

花火師のふるさと小牛田町に「山神社」があります。
山の神様は女の神様・木花佐久夜比賣命(このはなさくやひめのみこと)。
山を守り、山からの恵みを人々に与える神様として、古くから林業、鉱山業、温泉業等に従事する人に信仰されていました。
女の神様で、山から物を生み出すことから、縁結び、子授け、安産の神様としても有名です。
この山神社のお守り枕(写真右の黄色い袋)に入っているのが「籾殻(もみがら)」です。
「お米」から「玄米」と「籾殻」にきれいに分かれる→安産ということなのです。

余談ですが、鉱山やトンネル工事の現場に女性が立ち入ることを嫌う風習があるのは、 山の神様が女神のため、嫉妬をして、山が暴れる(落盤、出水など)からだそうです。
不肖黒島、鉱山で働いていた頃、仕事始めに必ず山神様に手を合わせてから入坑したものです。
思ふことあり、鉱山師(やまし)から花火師へ転進しましたが・・・・。



「花火」と「安産」に関してのオマケのお話 




宮城国体の開会を告げる”色煙”


”柳”や”信号雷””色煙”などの花火を”ポカ物”といいます。
この花火は写真のように玉皮が真っ二つに割れます。
2つに割れる→きれいに割れる→安産という連想から「安産のお守り」 として、当地ではこの玉皮を持ち帰る人がいます。
運動会で信号雷を打ち上げると、グラウンドに落ちる玉皮を拾うため先生やPTAの方々 が早朝から待ち構えています。中には自分の方に落すようにリクエストする方も・・・・。

だけどこればっかりは風向き次第なので・・・・(笑)





丸く開花し、青から銀色に変色する花火


玉名:黄芯青光露牡丹
撮影:菊田菊夫
2001年8月13日宮城県迫町長沼フートピア公園



   この他にもお米は花火に重要な役割を果たしています。
火薬を固めるために使用する寒梅粉とよばれる”糊(のり)”はお米から作られています。 この糊は水に容易に溶け、乾燥すると固まり、再び水を加えると溶ける。 つまり何回も糊として使え、その性質を失わないのです。 この糊の性質を利用したのが日本の花火の特色である”変色星”です。 寒梅粉の入った粉末の火薬に水を加えて、星掛け機で星を大きくし、乾燥。再び水を加え・・・・・。 この作業を何度も繰り返すことにより、層状に異種の火薬が重なり、日本人の独創、”変色星”ができるのです。 日本が世界に誇るこの技術も、お米から作られた素晴らしい”糊”があったからこそなのです。

米離れが進む昨今ですが、瑞穂の国の民として、もう一度お米について見直してみませんか?




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